アルバム「矜恃 〜PRIDE〜 」収録曲や最新曲「海猫」など全17曲歌う
来年歌えなくなってもいい、身を削る想いで今を歌い続ける
デビュー30年目を迎えている神野美伽が、2013年10月9日、大阪・上六の新歌舞伎座でデビュー30周年記念リサイタルを開いた。昼夜2回公演で、いずれも満員御礼の札が出るほどの人気。聴く者をこれだけ気持ち良くさせてくれる歌手はほかにいない、と思わせたほど。席を立ち上がって拍手や声援を送る人たちも見られる中、30年の歌手生活の喜びをかみしめるかのように、きのうが発売日だったアルバム「矜恃 〜PRIDE〜 」に収録された楽曲を中心に全17曲を歌った。
いつも通りに行くで—。
この日の主役、神野美伽はもう20数年一緒に活動し続けるバンドメンバーに、そう声をかけると緞帳が上がった。オープニング曲は「日本の男」。2006年に夫で作詞家の荒木とよひさが作詞し、岡千秋が作曲した。
会場の後ろでは、その荒木がステージを見つめて立っていた。
歌い始めて間もなく、歌詞が出てこない。
30周年記念リサイタルという大舞台が、ベテランをも緊張させたのだろうか。パブ二ングに悔し涙が見えた。
神野が荒木の前で見せた3度目の涙だった。
地元の大阪府貝塚市からもたくさんの応援団が詰めかけた客席からは、拍手とガンバレの声援が飛ぶ。それに押されるように再び歌い始めた神野は、1曲目を歌い切った。
神野はこうした温かい拍手や声援を送ってくれるたくさんのファン1人ひとりへ、ふる里大阪の町のど真ん中で、感謝の気持ちを伝えられるこの日のリサイタルを楽しみにしていた。
そんな思いをすべてステージにぶつけたかのように、始終飛び跳ね、そしてまた静かに、30年目に入った歌手生活の喜びをかみしめるかのように、見事なエンタティナーぶりを存分に発揮した。
リサイタルでのメインは、開催日を発売日に重ねたアルバム「矜恃 〜PRIDE〜 」の披露。その中から5曲を歌った。タイトルの「矜恃 〜PRIDE〜 」は自負を意味する。30年歌い続けてきた歌手神野美伽を自ら誇りにして、カバー曲を彼女らしくアレンジして歌った12曲である。
その1曲、「ケヤキの神」は神野と同じ貝塚市出身のIKECHAN(イケチャン)が歌う大阪・泉州のだんじり祭りをテーマにした威勢のいい歌。岸和田市内を中心に大ヒットし続けているが「全国区にしたい」と、今回収録したという。客席からのソゥリャー ソゥリャーの掛け声に合わせて激しく動きまわり歌った・
夫の荒木とよひさとデュエット
1部は会場後方から見ていた荒木が、2部になったら姿を消した。あれっ、帰ったのかなぁ、と思っていたらシークレットゲストとしてギターを持ってステージに現れた。
荒木は初めてステージで神野と一緒に歌うという「東京タワーが雨に泣いている」(作詞・荒木とよひさ、作曲・Rio)を、荒木さんのギターの弾き語りで披露した。アルバム「もう一杯だけの人生」 (ポニーキャニオン)からシングルカットしたものである。
神野は、9月19日で70歳になったという作詞家歴50年の荒木と結婚して15年目になる。ふたりにとっても記念のリサイタルであったのだ。「今も夫を尊敬し続けている」と神野。
荒木が神野に促されて詩人吉野弘の「祝婚歌」を朗読して、ふたりの結婚15周年を祝うと、神野は「いい記念になりました。これでお父さんが私のことを大好きであることが分かりました」と、照れながら話した。
リサイタルの1部前半は「日本の男に続いて、神野が演歌歌手として自信を持った1曲「男船」や「春夏秋冬屋形船」「女の波止場」と、オリジナル4曲を歌った。「男船」は、それまで上京してから体重が15Kgも痩せるほどの悩んでいた頃に出したもので、これを足掛かりに神野演歌を築き上げていった代表曲でもある。
このあと2部では最新曲の「海猫」や前作のカップリング曲「赤とんぼ」などを歌唱。ラストソングは「喜びましょう」を歌って、これからの歌手活動にも迷わずに前を向いて歩き続けるといった思いを歌に託した。
神野は全17曲を歌い終わり「言葉が見つからないほどうれしくて、うれしくて仕方がありません。来年歌えなくなってもいい、そんな想いで身を削って歌い続けています。これからも誠実に皆さんの前に身をさらして歌い続けていきます」と、これからの歌手生活への意欲を示した。
明日11日には東京都内でもリサイタルを開催する。
[神野美伽 オフィシャルサイト]
http://www.shinno-mika.com/
[神野美伽 キングレコード]
http://www.kingrecords.co.jp/cs/artist/artist.aspx?artist=13450